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妖しげな言葉(全15題) 14.逃げられない言葉

懸賞 2006年 02月 09日 懸賞

 性徒指導

 たまに怖くなる事がある。
 先生がではなく、今の状態が……。
 自分自身が……。

「はぁ……あッ……先……生……もう……あぁッ」

 後から繋がった状態で、先生が深く激しくオレを犯す。。
 オレはもう何も出ないと思うほど、欲情を吐き出したのに、先生はまだ許してくれない。
 
「まだだ、啓斗。もっと啼け……。もっと喘いで俺を欲しがれ」

 そう耳元で囁く声は、欲情に駆られた熱いモノ。
 その声にゾクゾクと快感を得てしまうオレは、どうして良いのか分からない。
 ただ先生の事が愛しくて、先生の事しか考えられなくて……。

「アァッ……あッ……せんせ……せんせぇッ」

 苦しいほどに貫かれ、怖いほど感じていて。
 もう嫌だ……そう思うのに、オレの心はもっとと悲鳴を上げながら先生を欲しがる。
 もう充分過ぎるくらい、先生の事が好きなのに。
 いや、この人が居ないと、何も出来ないのは分かっているから。
 だからこそ感じる恐怖。
 これ以上溺れたら、本当に自分がダメになりそうで。
 これ以上求めたら、この人が居ないと呼吸すら出来なくなりそうで。

「やぁ……あッ……せんせ……も……許して……はッ……はぁ……あぁッ」

 自分で言った言葉が何に対してなのか、自分でも分からない。
 この情事への言葉だったのか。
 それとも溢れ出る愛おしさへの物だったのか。
 頬を止めどなく流れる涙さえ、その意味が分からない。

「何が『許して』だよ。お前のココ、喰いついて離れないじゃねーか」

 からかうように笑いながら、イヤラシイ蜜が溢れる前を指で嬲られる。
 呼吸が止まる程の快感。
 狂いそうになる程の欲情。
 逃げ出したい……そう思う。
 この快感から……この激情から……。
 そして誰よりも好きで……だから怖い先生から。

「嫌だの許してだの言いながら、頂きそうだな啓斗。ほら……こうだろ? こうやってイカされたいんだろ?」
「はぁッ……ダメ……あッ……センセ……も……また……アッ……ッ……アァ――ッ」

 赤くツンとなっている胸を爪で潰され、指で転がしながら先生が絶対者の声で笑う。
 オレは意味のない喘ぎを漏らしながら、主の言葉通りに感じ、ビクビクと震えながら絶頂に達する。
 もう透明なソレしか出ない絶頂。
 溢れる程に注がれた、先生の熱いモノ。
 二カ所から溢れる、何度目だか分からない雫が、シーツを今一度濡らした。

「啓斗……」

 酷く甘い優しい囁きが、オレの耳をくすぐる。
 今ならまだ間に合うのに。
 今ならまだ逃げ出せるのに……。
 この快感から……この狂熱から。
 この狂おしい程に愛おしい人から。
 それなのに――。

「愛してる啓斗。お前だけ居れば、他に何も要らない」

 普段、滅多に聞くことが出来ないセリフ。
 その声だけでも、愛されている事が分かるほどのソレ。
 ずるい……そう思う程のタイミング。
 逃げ出したいと思う時に限って、逃げ出せると思う時に限って言われる囁き。
 こうやってオレは、また逃げるタイミングを失って。
 こうやってオレは、また拘束されて満たされる。
 
「せんせ……オレも……オレも先生だけ好き……オレも先生しか……要らない」

 求められても居ないのに、自分の口から逃げ道を塞ぐ言葉を紡いでしまう。
 そしてバカなオレは、自分の手で自分自身に足枷を付けて、囚われる。
 この狡い年上の人に。
 オレの心も体も……その鼓動までも支配している様な主に。

「イイ子だ、啓斗」

 溶けそうな程の笑みと、灼けてしまう程の口付けを与えられれば、心が酷く満たされる。
 きっとオレはこうやって一生逃げることは出来ないのだろう。
 なにせオレ自身が、先生に囚われる事を望んでいるのだから……。

Fin
お題配布元 秘密のお題

by mugensisou | 2006-02-09 13:24 | お題

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